黄色いちょうちょと萩

帰り道、駅出口へ続く廊下を歩いていると、グレー1色の構内に似つかわしくない姿を見かけました。黄色いちょうちょがフラフラと飛んでいました。


こんなところにいてもじきに死ぬだろうと思い、捕まえて外に出せないかやってみましたが飛び回るためうまくいきません。

私に付いてきたら外に出られるよ、と念を送ってもみましたがそれも通じません、、

そこで自分の体を壁にして出口に誘導しようと試みました。これは少しうまくいきましたが、突如出口から吹き込んだ強風に煽られ、ちょうちょは元いた場所よりさらに奥へと舞い戻っていきました。

私ももう追いかける気力はなく、何となく寂しい気持ちでその場を後にしました。


あんなところにどこから来たんだろ。モンキチョウを見るのは春だよな。初秋で黄色いちょうちょ…

そこでふと思いあたりましたが、そういえば今はちょうど萩の花の季節です。京都に来てから知った秋の色ですが、梨木神社の萩の周りには黄色いちょうちょがいっぱい飛んでたっけ。

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(ここにはちょうちょ映っていませんね。2年前に撮った梨木神社の萩です)

濃いピンク色の花の周りに明るい黄色がひらひら舞ってとても綺麗でした。


構内の無機質なタイル貼りの上で生を終えるのであろうちょうちょの末路を想像して物悲しくなったわけですが、あれ、そもそも私は人の死はまだまともに悲しんだことがないのでは、と気がつきました。

生き抜いたことへの感嘆と、もう二度とその人が自分の人生に物理的に登場しないことへの不思議さに圧倒されて、涙は流れても、あれは悲しみとは別です。

死そのものが必ずしも悲しいのではなくて、でもひとりで死ぬのはとても怖くて悲しいんだよなあ、だからあのちょうちょが気にかかるんだわ、と思いました。


萩の花畑を仲間たちと飛び回っていたならば、ちょうちょの感じていた世界は豊かなものであったでしょうか。

まあどうでもいい願いだろうけど、何となく、そうでありますように。


週末にでも萩を観にいって、黄色いちょうちょたちも一緒に観てこようと思います。