パレスサイドホテル・ロビーコンサート

今晩は、チェロの友人の引退演奏ということで、御所南のパレスサイドホテルのロビー演奏を聴いてきました。


このロビー演奏は、大学入学の頃からよく聴きにいったので、通って7年目になります。

その間に、演奏者の世代交代も多く見てきました。


本日の曲目は、懐かしいものばかりでした。

チャイコフスキー弦楽四重奏曲第1番、1楽章。

こちらは2年少し前に、チェロの同期の女の子が卒業間際の最後の発表会で弾いていたことを思い出します。

4年間の苦楽を共にした仲間でした。

当時、その子の楽器がちょうど不具合で、私の楽器を借りて本番に臨みました。

私の楽器は大人しめでパワーに欠けますが、その子はなかなかに素敵な音色で弾いてくれて、私の楽器と相性が良いんだなと嬉しく思ったことを思い出します。

私はチェロが下手くそで、あまり楽器の持ち味を生かしてあげられていなかったので、上手に弾いてもらってうれしかったです。


2楽章は通称「アンダンカンタービレ」で親しまれる緩徐楽章で、こちらも色んなプレイヤーが弾くのを聴いてきました。

なかでも印象的だったのは、ちょうど6年だか7年前、ロビー演奏に通いだした頃に、当時の先輩がまさにそのホテルの同じ場所で披露した演奏でした。

ピチカートの響きが非常に澄んでいて、優しく温かい空気に会場が包まれていました。


そして、最後のアンコールはアンドレ・ギャニオンの『めぐり逢い』でした。

曲名が出た瞬間にどきりとしました。

これはまだ私が小さい頃、母親が「いつかあなたの結婚式に弾いてあげるね」と言ってくれた曲です。

その数年後に母親は眼を悪くしてピアノを弾くのを辞め、かつて母娘4人がレッスンを受けていた実家では今や誰も触る人がいなくなり、グランドピアノも引き払われました。


まだ手が小さくて音の跳躍が難しかった頃に、「大人の曲」として憧れ、母親の譜面を見よう見まねでさらった『めぐり逢い』。

今でもふと思い出した時に弾きますが、真面目に譜読みしたことはないために、クライマックスの、いちばん和音が動いて美しいフレーズだけが弾けません。


そのように、そしてそれだけではない、沢山の想い出が楽器の響きに乗って身体を駆け巡った夜でした。


追記

本日引退の友人についていえば、いつかのプロシア王という曲の、あるフレーズの歌い上げ方が忘れられません。ラズモフスキーの出だしなんかも良かったな。

空間掌握力のポテンシャル、半端ないです。

しかしどちらも何年前のことになるんだろ…